はじめに
残業手当や割増賃金の単価計算に関しては、法律によって除外される手当が存在します。例えば、家族手当や住宅手当、通勤手当などが除外される対象となっていますが、支給条件によっては例外もあります。以下では、家族手当や住宅手当、そして残業単価について解説いたします。
なぜ残業単価計算が除外できるのか
割増賃金の単価計算から除外される手当は、以下のような手当があります。これらの手当がなぜ除外されるのかというと、それは労働との直接的な関係が薄く、個人的な事情に基づいて実費弁償として支給されるものだからです。この「実費弁償」という部分が重要なポイントとなります。
家族手当 / 通勤手当 / 子女教育手当 / 住宅手当 / 臨時に支払われる賃金 / 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金 |
家族手当の条件
家族手当は通常、労働者が「家族を扶養していること」を条件として支給される手当ですが、割増賃金の単価計算から除外される家族手当とは、以下の例のように「扶養家族の数やその額に基づいて算出される手当」を指します。
〇除外できる家族手当の例
配偶者 | 月額10,000円 |
子 | 月額5,000円(二人まで) |
たとえば、独身者にも一定の手当が支給される場合、その支給される部分(または扶養家族のある人に対して「本人分」として支給される部分)は、家族手当とはみなされません。また、扶養家族の数に関わらず一律に支給される手当は除外することはできません。
✕除外できない家族手当の例
・扶養家族がいる者に対して一律10,000円など
要するに、家族手当として除外するためには、扶養家族の人数に応じて支給される手当である必要があります。この点には注意が必要です。
住宅手当の条件
住宅手当を割増賃金の計算から除外するためには、住宅手当が住宅にかかる費用に応じて算定されるものである必要があります。つまり、①費用に一定の割合を乗じた金額とする方法や、②費用を段階的に区分し、費用が増えるに従って支給額も増やす方法などが考えられます。このような計算が必要です。
〇除外できる住宅手当の例
(定率パターン)
賃貸住宅居住者 | 賃料月額の30% |
自己所有住宅居住者 | 住宅ローンの30% |
(段階パターン)
住宅月額費用 | 手当額 |
8万円まで | 1万円 |
9万円~15万円未満 | 2万円 |
15万円以上 | 3万円 |
✕除外できない住宅手当の例
・居住形態に関わらず一律10,000円
・賃貸は一律10,000円、持ち家は一律20,000円
・会社の命令により転居し賃貸物件に住む場合一律20,000円など
単価計算を間違えた時のリスク
家族手当や住宅手当といった除外できないはずの手当を割増賃金の計算から除外していた場合、未払いの残業代が発生してしまうことになります。自社の計算が正しいかどうか、確認してみることが大切です。